まさかの差押え‼
2016.08.17

後藤(仮名)様に任意売却のご依頼を頂いたのは6年前新築した会社社屋の支払いを延滞して3カ月目のことでした。
当時、最高で18人いた社員も現在は3人、その為大きい事務所は必要がなくなり、債権者の取り立てなどもあった為、社屋はほとんど使用せず事務所機能は自宅に移していました。

初回の相談に来られた際、後藤社長は
「現在の状況に至ったのは自分の責任、それでもいっしょにもう一度頑張りましょうと言い、付いてきてくれた仲間の為に何とか事務所を任意売却し、債務を圧縮、事業を再起させたい」
と涙を浮かべながら、熱くお話を頂きました。

私は面談しながら、何とか後藤社長の熱い気持ちに答えたいと思いを強く持ち、任意売却をお受けしたのです。

しかし、郊外の住宅地にある事務所を訪問すると1階の倉庫は資材や工具が営業時そのままの状況、事務所部分は机は1か所にまとめられてはいましたが雑然としていました。

物件的な観点から見ての大きな問題は事務所として利用するには場所が悪い、住宅として利用するにはお風呂も無く、キッチンは小さい、給湯器の容量は少ない、さらに間取りがうまく仕切れないということでした。
建物の築年数は新しく大手ハウスメーカーにより鉄骨造で建てられた社屋という点はセールスポイントになるのですが問題を考慮すると査定価格は通常の近隣住宅と比較しては大分安い金額になったのです。
しかし、債権者の政府系金融機関からでた販売の応諾価格は査定額の2倍。
金融機関の査定額は現在の評価額から計算する為、債権者の考えも理解できますが市場の価格を一切考慮されていないことは残念でした。
しかし、そんな愚痴を言ってもしょうがない、後藤社長と社員皆様の為にも最大限頑張ろうと頭を切り替えました。

ただ、成約させるためのポイントは築年数が浅いこと大手ハウスメーカー施工、鉄骨造などのメリットを最大限アピールし販売を行うしかないと考え活動。

しかし、セオリー通り中古事務所としてネット上に情報公開し販売活動を行ったのですが2か月が過ぎても反響は1件もありませんでした。

次の販売方法としてはグレーな感じはしたのですが住宅としてネットに掲載しました。すると問い合わせのメールが3件、しかし嘘はつけない為、資料の送付と一緒にお風呂や洗面、居室の仕切りも無い為、購入後大規模な工事が必要との内容を説明しました。するとやはりその後の連絡は取れなくなってしまうのです。

以上のような状況を債権者の政府系金融機関に何度も説明し販売価格の交渉を行いました。

その結果、当初提案した査定価格まで5カ月が経過した頃に近づいてきたのですが相変わらずお客様からのお問合せはありません。
残りの方法としては一般のお客様への販売は難しいと考え、まずは不動産の買取を行う不動産業者様にお声をかけ、3社に内覧してもらい購入価格を出してもらいました。しかし、回答の購入価格は厳しいもので一番高い会社でも当社の査定価格の半額でした。一社は工事をしても費用がかかり、想定のリフォーム工事を行った後の再販売価格から考慮すると購入すら不可能ですとの返答でした。

その時、残念ながら債権者から猶予して頂いていた任意売却の期間が終了し、競売の申し立てに入るとの通知が届いたのです。

ただ、私も後藤社長と会社の皆さんの再起をできる限り手伝いたいとの思いは強く、競売の申立と手続きは進められますが引き続き販売することの承諾を債権者から得て継続し成約を目指しました。

その2週間後、別件でお問合せ頂いた不動産業者様にダメもとで物件を紹介してみたところ、ご興味を示され内覧まで至りました。

そして、なんとやっと「お申込み」を頂くことができたのです。

しかし、もうすでに競売の申立はされていた為、税金滞納分についての差押えが会社所在の自治体から会社所有になっている建物に、さらに数日後、居住地の自治体から個人所有の土地にも差押えが入ってきたのです。
後藤社長から事前に税金については遅れていることをお聞きしていたので想定の中、自治体と交渉を行い解決しました。

いよいよ、契約というときに今度は「年金事務所からの差押え」が入ってきたのです‼

加入していた厚生年金の支払いもここ数年できていなかったのです。

今まで8年間任意売却を行ってきましたが年金事務所の差押えは初めてでした。

早速、連絡し担当者と話したのですが交渉の余地が無く、未納の年金280万円完納以外差押解除には応じないとの返答でした。
このまま、競売で売却されれば年金には一切代金の配分はありません、いくらかでも納付する為に任意売却を行い差押解除に応じて欲しいとの要請を行ったのですが全く聞きいれてもらえませんでした。

その為、本当に非常に無念でしたが任意売却を断念せざるをえませんでした。

その後、競売は粛々と進められ売却。

本当に後藤社長、社員の皆様には謝っても謝り切れません。
せっかく、会社再起の為の社屋売却を任せて頂いたのにこの結果に至ったのは本当に無念です。

今回の反省はもっと早く、競売の申立をされる前に販売方法があったのでは、今回のお客様は以前から知っていたのになぜ、もっと前に声をかけなかったのか、本当に悔やまれます。

後藤社長は「一生懸命してくれたのはわかっているのでしょうがない」と優しい言葉をかけて頂きました。
しかし、社長や社員の皆様の人生がかかった今回の取引を成約できなかった結果について、本当に申し訳ない気持ちで一杯です。

後藤社長には二度と同じことが無いように更に1件1件に集中し全力で任意売却に取り組むことをお約束しお詫びいたしました。

本当に申し訳ございませんでした。